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REKISI  昭和45年の7月から8月にかけて、西城町油木の比婆山のふもと付近で「怪物を見た」という人が次々と現われた。

 「サルにしては体が大き過ぎる」、「野ザルかと思ったが人間の顔立ちによく似ていた」、「ゴリラに似た怪物なのでびっくりした」、「大きさは普通のサルの4、5倍。年老いた大ザルのように感じた」などの証言から、その生物は「類人猿か?」と言われるようになる。しかし、類人猿として知られるオランウータンやゴリラは、西城の冷涼な気候の中で食料を得て生き延びるとは考え難く、なぞはさらに深まった。

 同時に目撃者たちは、「震えが止まらなかった。夜は早めに戸締まりをし、子どもも外に出さないようにしている」、「恐ろしさのあまり親せきに駆け込んで泊まった」、「あの恐い顔や姿を見たら命が縮まる思いがする」、などと話していることから、とても恐い「怪物」として認識されていたことがわかる。

 庄原警察署でも連日、目撃場所のパトロールを行い、近くの八鉾中学校油木分校と油木小学校では、出没地区から通学する児童、生徒に対して、集団下校するよう注意を呼びかけた。一方で、事件が伝えられるにつれ、目撃者には多くの取材が押し掛け、日常生活に支障をきたし始める。そこで町は目撃者に迷惑料を支払うことを決め、同時に役場住民課に類人猿相談係を設置して対応に当たることになった。

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